ゲストハウス開業へ向けた一歩目のヒント


一念発起して大きなチャレンジをすることも大切ですが、自分の道を確かめるように、時には方向転換しながら一歩ずつ前進することも大切なはずです。

地域の人や訪れた人同士の交流の場となるゲストハウスは、様々な文化が行き交う魅力的な場ですよね。訪れた人の中には移住する人もいたり、地域おこしの面でも大きな役割を果たすことがあるようです。

しかし、そこまで豪華な造りではないゲストハウスでも、開業のコストはかかりますし、運営の難しさもあります。実際に泊まったりネットで調べたり、情報はいろいろ持ってはいても、開業の感覚を経験する機会はなかなかないのではないでしょうか。

そこで今回は、将来の開業を目指してサラリーマンからゲストハウスへ転職した人に話を聞いてみました。実際に働いて感じたギャップや、開業へ向けての学びなどを伝えられればと思っています。

 

SEからゲストハウススタッフへ

山崎さん(男性、30歳、仮名)は、新卒からSEとして働いていた会社を辞めて、1年ほど前からゲストハウスで働いている。

もともと旅が好きで、大学の卒業旅行で、1人で東京から福岡まで2週間かけて旅をしたことがあった。その時に京都でゲストハウスというものに初めて泊まり、「こんな場所があるのか」と衝撃を受けた。

少し人見知りだった自分が、知らず知らずのうちに、京都の町の人やスタッフ、訪れていたお客さんの輪に入っていたからだ。「鍋一緒に食べない?」と誘われて、なんの抵抗もなく打ち解けてしまったことに、自分でも驚いた。

地元・岩手県のさんさ踊りも好きだったから、地域との関係が深いゲストハウスにますます興味が湧いた。社会人になってからは、旅で泊まるのはほとんどゲストハウス。

 

仕事が忙しい時期が続き、30歳を目前に自分のこれからのことを考え始めるようになる。すぐにではなくても、長い目で見て、地域おこしにつながるようなゲストハウスを開きたいと思うようになっていった。

とはいえ、これまで外から見ていただけで開業スキルはないから、まずはゲストハウスで働き始めようと考えた。まずは、どんなゲストハウスで働きたいか考えないといけない。

旅先で、お客さんや地域の人が創るコミュニティに触れたり、オーナーさんにゲストハウス経営の話を聞きながら情報を集めた。

山崎さんのゲストハウス選びの基準は、外国のお客さんが来ることと、経営が学べること。外国のお客さんが来てくれると、より多様なコミュニティが生まれておもしろいそうだ。

働き先として決めたのは、複数のゲストハウスを運営する企業だった。最初はアルバイトとして入社して、今は社員として働いている。最初は東京勤務だったけれど、今は地方勤務だ。

実は、最初から社員で入ってくれと打診があったのだけれど、自分からアルバイトで入社したいと返答した。これからずっとゲストハウスの世界でやっていくのか、その時点では決めきれなかったから。

アルバイトの時は、フロントで接客対応や掃除などが主な仕事だった。社員の今は、掃除のアルバイトさんをマネジメントしたり、経費の管理・人件費の管理、設備の修繕対応などを行っている。加えて、販売担当をサブでやっていて、予約サイトに載せる価格決めなどのサポートや、実際の設定実務などをやっている。

 

実際に働いて感じたギャップ

ここからは、働きはじめてから感じたギャップや、学べていることなどについて触れていきます。

 

多文化対応の大変さ

「部屋に人がいるんですけど」「パスポートのコピーをとられるのは嫌です」これらは実際に海外のお客さんから言われたことです。

文化も違いますし、旅に慣れていない人も泊まるので、相部屋と知らずに予約する人もいるそうです。そういうお客さん一人ひとりに、不慣れな英語で対応するのは、最初は苦労しました。

対応に時間はとられてもきちんと仕事を回し、クレームを言われてもキャンセル料はもらうなど、営業していくために必要な対応を学びました。

こういう実情を知っていると、予約サイトへの注意事項の書き方とか、クレームを言われた時の適切な応対とか、生々しい経験が積めそうです。

社員になってからよりも、アルバイト時代の方がギャップに感じることが多かったと言います。社員ではバックオフィス的な役割が多く、サラリーマン時代の経験から仕事のイメージが湧くようですが、現場業務は初めての体験ばかりだったそうです。

 

集客以前に大切なこと

東京と地方を両方経験して、それぞれのゲストハウス経営の難しさも分かってきました。

東京は、観光客が多いので、訪れた観光客にいかに自分たちのゲストハウスに泊まってもらうかがポイントになります。良い戦略ではありませんが極端な話、料金を下げればお客さんは入ることになります。

一方で、地方は観光客自体が少ないので、ゲストハウス間で競うよりも、まずは地域に観光客を呼び込む必要があります。例えば飲食店では、地元住民もお客さんになりますが、ゲストハウスは外から来る人だけが、お客さんであるのが難しいところです。

 

山崎さんが赴任した地方は、地域全体の活発な動きもあり、徐々に人が増えるフェーズでした。開業するのであれば、そういったタイミングを見定めるか、呼び込むための施策を考え、多くの人を巻き込む力が必要だと感じたそうです。

山崎さんが将来開業したい岩手県も、観光客が決して多くないエリアなので、自分事として日々学びが多いそうです。

 

SE時代と求められる力の違い

前職のSEは、決められたモノを創り上げる仕事でした。これは、出店が決められたエリアに、決められた期日までにゲストハウスを創る仕事に置換えられると思います。

一方で、今赴任している地方でさらに観光客を呼び込んだり、将来的な開業を考えると、マーケティングの知識や経験が必要だと感じているそうです。

こうして、実際に働くことで必要な力を身をもって感じられて、仕事を楽しめるポイントでもあるそうです。

 

開業へ向けてブラッシュアップ出来ていること

ゲストハウスに転職した当初は、「自分で開業する」という1つの選択肢だけで考えていました。ただ、今は他に2つの選択肢も視野に入れています。

1つは、今の企業の地方出店先として岩手県を提案することです。開業することが目的ではなく、岩手県にゲストハウスを開き、新しいコミュニティを創り上げることが目的。そう考えた時に、今の企業のノウハウや資本力を活かした方が確実性があるのではと、この選択肢が浮かんだそうです。

もう1つは、副業としてゲストハウスを始めることです。岩手県のマーケットサイズを考えると、ゲストハウス1本で食べていくのは厳しいかもしれないと考えました。

いずれも、働き始めて得た気づきです。ただ、自分の理想とするゲストハウスを実現するためには、やはり自ら開業した方がいいのかな、だとしたら30代かなとも話していました。

社長さんにも会う機会があり、描くゲストハウス像を話し、叱咤激励も受けているそうです。

 

開業へ向けた一歩目のヒント

自分が目指すゲストハウスを探す

山崎さんは、目指すゲストハウス像を自ら泊まりながら描いていきました。日本人がメイン顧客か、外国人も泊まるのか、多くの人が泊まれるようにするか、小規模にするかなどです。

実際に泊まって、その場の雰囲気に触れたりオーナーさんと話して、イメージを深めていきました。

難しいのは、収益とコミュニティの濃さがトレードオフになるところだそうです。ゲストハウスの収益性はベット数に左右されますが、増やすほどコミュニティが希薄になりがちで、目指す姿から遠ざかってしまうのだとか。

また、前述のように地域によって経営のポイントが変わるので、経験を積むのではあれば、将来自分が開きたい地域と近い条件の場所が良いかもしれません。

 

実際に働いてみる

実際に働くことで、必要なスキルや、開業時に考えるべき戦略なども事前に練ることが出来そうです。

働きながらシミュレーション出来ますし、周りで働くのはゲストハウスに詳しい人ばかりなので、日々ブラッシュアップできそうですよね。

お客さんも、将来自分のゲストハウスに来てくれる顧客候補なので、関係性を築いたり、ヒアリングをしてニーズを掴んだり、プラスになることが多そうです。

 

転職  or 副業?

今の仕事を辞めて、畑違いのゲストハウスに転職することは大きな決断です。

副業として始めるのであれば、決断もしやすいですし、アルバイト雇用の場合が多いので気軽に始められます。採用側も、社員雇用よりも募集の頻度は高いですし、採用のハードルも低いはずです。

パラレル求人では、東京で2つ、大阪で2つ、副業的に出来るゲストハウスの求人を掲載しています。

「ゲストハウス品川宿」や一軒家ホテル「Bamba Hotel」「Araiya」を運営する株式会社宿場ジャパンは、訪れた人と地域の人のつながりを創っています。ゲストハウス運営の他に、開業支援も行っている企業です。

 

寝台列車の実際のパーツを使った「TrainHostel 北斗星」などを運営する株式会社R.Projectは、ホステルの運営や地域おこしに留まらず、東北地方のPRにも力を入れていきたいそうです。アルバイトの高校生が積極的に企画提案をするなど、職種にとらわれず仕事経験が出来る場所でした。

 

大阪にある、「Kintetsu Friendly Hostel -Osaka Tennoji Park-」は、2016年11月に開業したばかりです。お客さんやスタッフが仲良く過ごせる場所を、一緒にアイディアを出しながら創っていく人を募集しています。

 

同じく大阪にある「Osaka Guesthouse Hive」は、何か目標を掲げた「変人」を求めています。企画案を出すのはアルバイトスタッフで、ハロウィンにはうまい棒2000本をフロントの壁一面に張り出したこともあったそうです。

 

まとめ

将来開業を目指してゲストハウスへ転職した山崎さんも、多くのギャップや難しさを感じながらも、今では多様な選択肢を考えているようです。考えるべき戦略や、身につけるべきスキルなんかも感じることが出来て、着実に前に進んでいました。

情報収集から始めるのか、副業として働き始めるのか、あるいは転職や開業準備に取り掛かるのか。多様な一歩目がありそうなので、今の自分に合ったスタイルで踏み出してみてはいかがでしょうか。

 


2017年05月24日 | Posted in 複業アイディア・チャレンジ | | No Comments » 

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