地域の健康な毎日を、デザインする


年齢を重ねるごとに充実感が増すような、右肩上がりの人生を歩みたい。これは筆者個人の願望だ。

そのために健康であり続けたいけれど、医療機関に頼りすぎる生活は少し違う気がする。

長い人生をより楽しむために、健康と生活の充実を両立させたスタイルを、生活者である私たちの視点で創り出してしまってもいいのかもしれない。

 

一般社団法人グッドネイバーズカンパニーは、地域の医療・保健・福祉の取り組みを、より参加型で創造的なものにすることで、ユニークな切り口で各地の健康課題の解決に取り組んでいる。

高齢化が本格化するこれからの社会において、これまでの医療従事者主体のケアだけでなく、生活者が主体となった、地域の人間関係やまちづくりの視点も内包した広義のケアが不可欠であると考えている。

2014年5月に設立され、事業内容は、ヘルスプロモーション、ワークショップ・セミナー、デザインリサーチだ。

具体的には、摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能に特化した新感覚スポーツプログラム“くちビルディング選手権”や、ケア系人材とクリエイティブ系人材の出会いの場“ケアクリ会議”などを企画・運営している。

医療現場で働くスタッフと、まちづくりや教育の現場で働くスタッフが、複業で活躍する組織だ。

 

今回は、代表の清水愛子さん、藤川かん奈さん、児島満理奈さんに話を聞いた。藤川さんは、地域おこし協力隊として山形県に拠点を置いており、今回はリモートで参加してくれた。

 

代表の清水さんは、以前勤めていた博報堂のイノベーションラボで、クライアント企業のユニバーサルデザインを再定義するプロジェクトを手がけていた。

ユニバーサルデザインとは、障害の有無や年齢、性別、人種などに関わらず、多くの人々が利用しやすいように製品やサービス、環境をデザインするという考え方だ。

「地域にどっぷり入りこむスタイルのフィールドワークでお年寄りに話を聞く機会があったのですが、想像していたお年寄りのイメージと全然違ったんです。何というか、アグレッシブに、自分なりの生活スタイルを、自分なりの方法で築いていました。」

「私は、イノベーションの基礎となるデザインリサーチを専門にしていたので、生活者がデザイナーの想像をはるかに超えた、発想豊かなモノ・サービスの使い方をしている場面には良く遭遇していました。」

 

もっとリアルで、生活に溶け込んだデザインを。

「ところが、お年寄りは、長い年月かけて培ってきた習慣が加齢によって少しずつ出来なくなります。時に医療や福祉によるサポートが必要となるため、若者や働く世代の人たちとはちがった意味で、たくましい生活密着型の創意工夫をしていることがわかりました。」

「そんな一人一人の野性味あふれる工夫を目の当たりにした時、お年寄りのリアルな生活にとけ込んだデザインや取り組みに挑戦したいと思いました。」

「医療や保健活動の取り組みは、正しいけれど、楽しいと思える要素がとても少ないと思います。特に医療関係の商品やサービスは、機能性を全面に謳った食品とか、歩行補助のための杖とか、目的を一直線にデザインへ反映させたものが多い。これでは、創意工夫に富んだイノベーティブなお年寄りにはかなわないなと思ったんです(笑)。」

その後も、地域で暮らすお年寄りの生活へ接するうちに、小さくてユニークな創意工夫への関心が高まっていった。

「プロジェクト期間中に東日本大震災が起こり、地縁やコミュニティの力、関係性によって築かれるソフト面のインフラやソーシャル・キャピタルの重要性を改めて感じるタイミングでもありました。」

 

独立のきっかけは、医療系大学へ編入学が決まったこと。

「地域を知れば知るほど、医療や保健・福祉に関わるテーマについてちゃんと勉強して、より深くコミットしたいと思ったんです。」

「ある時、社会人が大学へ編入学出来る制度があると知って、受験をしました。すると、これまでの経験が評価されたのか、嬉しいことに合格して『突然、新しい道がバーンと開けた』という感じでした(笑)。」

「なので全然計画的ではないのですが、大学への入学を決めて、会社を退職し、数年して独立しました。個人として動くよりも、チームで動いた方が、色んな知恵が集まって活動が広がっていくと思ったので、一般社団法人を設立して、仲間を集めることにしたんです。」

 

今、最も力を入れているのは、摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能に特化したスポーツプログラム“くちビルディング選手権”の展開だ。摂食嚥下とは、食物を口に取り込み、胃に至るまでの一連の過程のことだ。

「プロジェクトのヒアリングで、お年寄りの食生活に興味を持ちました。お年寄りになると食べ物をうまくのみ込めなくなることや、仲間と集まることが少なくなって、食べることを楽しめていないことに気づきました。」

「同時に、食べる力が衰える事で、肺炎のキッカケとなり、命を落とす場合もあるという事も活動の中で知りました。」

「子どもからお年寄りまで、食べることをしない人はいない、ユニバーサルな課題だと思ったんです。また、医療従事者はもちろん、一般の生活者から、アーティストまで関わることが出来るテーマなので、課題解決のためのデザインの関わりしろが多いと思いました。」

 

スポーツだから、垣根を越えたつながりが生まれる。

くちビルディング選手権は、保健活動でもあり、スポーツ競技でもある。

「一つ一つの種目が機能評価の補助につながるように設計しています。例えば、種飛ばしは、むせ込んで誤嚥(ごえん)を防ぐ時に必要な、腹筋や肺活量の評価に適しています。」

「種飛ばしを本気でやるんです(笑)。そして全力で楽しむ。審判がいて、測る人がいて、ルールも決めて厳密にやることでスポーツ競技になるんです。本気で競い、本気で笑えるプログラムにするべく、細部にわたって場のデザインをしています。」

「医療や保健活動は、エビデンスに基づく効果がある一方で、参加への動機づけが難しく、一方通行のコミュニケーションで完結してしまうものが多いと感じています。病気を抱えている人や課題が明確な人であれば自分ごと化しやすいですが、その手前のステージの人はなかなかアクションにつながりません。」

「そこにデザインの力を借りて、エンターテイメント性やゲーム性を加えるんです。そうすることで、これまで医療がリーチ出来なかった人たちに繋がり、自分ごと化のキッカケになり、次のアクションにつながると考えています。」

「くちビルディング選手権には、メインターゲットのお年寄りだけでなく中高生や、医療や福祉の専門学校生が、地域ボランティアや職業体験として、関わってくれています。開催地域の関係者の方々に趣旨を伝えると、参加を表明してくれたり、人を紹介してくれたり、自然と輪が広がっていくんです。」

「スポーツという仕掛けを加えることで、少し敷居が高い医療や福祉の分野に、普段なら顔を出さない層のお年寄りや、この分野に関わりの少ない若者が入ってきやすくなります。」

「医療・保健・福祉とは、本質的には人々の暮らし、人の生き方に関わることなので、本来であればもっと身近であるべきだと考えているんです。これまでの医療は、病気を治すことに特化していて、例えば医療を施してくれるお医者さんは少し遠い存在でした。」

「私達は医療従事者がケアを担うのではなく、生活者がケアを担う時代の中で、生活者が医療や保健活動と関わるバリエーションを、沢山デザインしていきたいと思っています。」

 

地域おこし協力隊×グッドネイバーズカンパニー

藤川さんは、大学在学中に立ち上げた“笑学校”を卒業後も続け、その後地域おこし協力隊として山形県遊佐町に赴任した。グッドネイバーズカンパニーでは、くちビルディング選手権の地域展開とクリエイティブ面などを担っている。

「笑学校は、子どもからお年寄りまで、誰でも先生になれる地域の学校です。おじいちゃんおばあちゃんに、茶道やバイオリン、料理を教わったり、若者主催で楽器を作ってみんなで演奏したりしていました。」

「地域おこし協力隊では、最近は日替わりで店長になれる“ハントシストア”という場を作って運営しています。人生で一度はカフェや居酒屋などをやってみたいなという人が、チャレンジ出来る場です。」

笑学校も、地域おこし協力隊も、グッドネイバーズカンパニーも、多世代のコミュニティへの関心から始めたもの。笑いあったり、支えあったり、地域の人のつながりが生まれる場を、作り続けている。

「山形の各地でくちビルディング選手権を開いているのですが、小学校で開催した時には、ちびっ子たちが登場する“おいしく食べよう体操”という、お口を鍛える自主トレ動画も制作しました(笑)。」

「グッドネイバーズカンパニーを通して、人々がわくわくを感じていなかったようなことを、リデザインして、息を吹き込みたいと思っているんです。」

「それが地域なのか、医療福祉なのか、例えば公民館のような空間なのか、可能性は広く考えています。」

 

理学療法士×グッドネイバーズカンパニー

プログラムの開発に関わる児島さんは、理学療法士の資格を持っており、現在は在宅医療の分野で訪問リハビリテーションの仕事をしながら、グッドネイバーズカンパニーに携わっている。

「さまざまな病気やその後遺症を抱える方と、社会復帰の方法を一緒に考えたりしています。」

「病院に勤めていた頃に、積極的なリハビリを乗り越えて退院につながっても、また病院に戻ってきてしまう患者さんをたくさん経験しました。退院後、社会になじめないことが理由の一つでした。」

「なので、病院ではケア出来ない、社会と関わっていく退院後の段階にも携わりたいと思って、グッドネイバーズカンパニーに参画しています。」

 

児島さんの専門知識や臨床経験が、くちビルディング選手権の企画に活かされている。

「新しい競技のアイデアが出た時に、身体のどういう機能に関わるのか考えたりして、医療的な側面から企画をブラッシュアップしています。」

「ただ、医療的な要素を組み込みすぎると真面目すぎてつまらなくなってしまうので、いかにおもしろさを保つかが腕の見せどころです。」

「普段私が携わっているリハビリって、主体が患者さんなので、本人のモチベーションが大事なんですよ。楽しさやワクワクする気持ちがそのモチベーションにつながるし、いかにやる気スイッチをオンにできるかでリハビリの効果も変わってきます。」

「グッドネイバーズカンパニーでは、どうすれば医療に自発的に取り組んでもらえるかを考え、実践して、その経験を臨床の場面にも活かしていきたいと思っています。」

 

デザインの力で医療をもっと楽しく、身近にしたい。

くちビルディング選手権は、2017年度のグッドデザイン賞を受賞した。

「医療の世界の人たちに、『デザインをエッセンスに、こんな切り口の活動が出来るんだ』って知ってほしかったんです。」

「これからは、グッドネイバーズカンパニーの活動を理解して、価値を認めてくれる人とのつながりを、さらに作っていきたいと思っています。つながりの先に、事業提携や協賛といった関係性も作っていきたいんです。」

「ですので、広報活動と共に、ファンドレイジング的な役割を担ってくれる人が参画してくれたらうれしいです。もちろん、各地域の課題解決のためのデザインプロセスを一緒に企画・運営してくれるメンバーも大歓迎です。」

「私たちの事業は、病気の治療のようにダイレクトな成果は見えにくいのですが、高齢化が進むこれからの社会に必要な取り組みだと感じています。生活者が主体となって取り組む医療を、いろんな地域で面的に広げていきたいと思っています。」

 

ソーシャル・キャピタルという概念がある。人々の協調行動が活発化することで、社会の効率性が高まるという考え方だ。

物もインフラも十分に行き渡り、人々の価値観も変化してきた今、目には見えにくい資本の重要性が増していきそうだ。

グッドネイバーズカンパニーで、これからの社会に必要な医療や地域の形を、一緒に描き、作り、広めてくれる方、お待ちしています!

(吉田大樹)

 

  一般社団法人グッドネイバーズカンパニー
求める役割 ① 広報・ファンドレイジング

グッドネイバーズカンパニーのビジョンや活動を、企業や行政などの団体、世の中に向けて、一緒に伝えてくれる方。事業提携や協賛、寄付などの資金調達に関わる関係性づくりに中心となって取り組んでくれる方。

② 企画・運営・デザインスタッフ

くちビルディング選手権をはじめ、グッドネイバーズカンパニーが企画・運営するイベントを一緒に作り、運営してくれる方。

③ イベントスタッフ

くちビルディング選手権の現場を一緒に盛り上げてくれる方。

働く場所 関東を拠点にいっしょに活動をしてれる方を募集します。

働き方によっては地方出張があります。

働く時間 お仕事などの状況に応じて相談させてください。

既存メンバーも、複業として携わっています。

求める人物像
  • グッドネイバーズカンパニーのビジョンに共感し、医療・保健・福祉の分野で地域を面白くしたい、アクションを起こしたいと考えている人
  • 人と地域・ヘルスケア分野に興味がある人
  • ファンドレイジングやイベント開催の経験のある人
  • 新しい経験や挑戦にワクワク出来て、学ぶ意欲にあふれる人
雇用形態 関わり方に応じて相談させてください。

(ボランティア・プロボノ・非常勤職員等)

給与 関わり方や経験に応じて相談させてください。
募る人数 1~2名
応募方法・プロセス 以下のフォームより、お名前/メールアドレス/電話番号/ご年齢/これまでの代表的なお仕事/応募動機をお送りください。担当者から追ってご連絡させていただきます。

是非、直接お話させていただき、一緒に楽しみ成長できる関わり方を相談させてください。

ご質問や、ご相談などもお待ちしています。

その他

 

 


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