アフリカ版「置き薬」で、医療を日常に
置き薬は、300年以上も前に富山県で発祥したビジネスモデルだ。
「先用後利(せんようこうり)」という独特の商法で、お客さんに薬をまず預け、利用分だけ代金をもらう。東北のように雪深い地域などでは、特に重宝されたそうだ。
NPO法人AfriMedicoは、置き薬の仕組みをアフリカに広める活動をしている。

タンザニアから活動をスタートしており、医薬品販売の知識がある現地スタッフが、薬の仕入れや販売を行っている。仕入れる薬は、AfriMedicoスタッフが指定するものもあるが、状況を見て現地スタッフが選択する場合もある。
事業としては、薬の販売の他に、日本企業のマーケティング代行のニーズも見込んでおり、持続可能な組織運営で、長期的に課題に向き合うことを目指している。
今回は、プロボノとして、人事総務や広報、資金調達、タンザニア渉外、経理財務などを担う人の募集です。普及に向けてやるべきことは幅広く、専門知識がなくても出来る仕事は多いそうです。
20人を超えるスタッフは、普段の仕事以外の時間を使って活動をしているので、複業としての関わりが可能です。
東京都新橋にある、御成門駅から歩いて5分の「AT-Garage-学べる大人の秘密基地-」が普段の活動場所。
日曜日の午後、定例ミーティングが終わった後に、代表理事の町井さん、理事の山口さん、プロボノの大谷さんに話を聞いた。町井さんのお子さんも、参加してくれた。

代表の町井さんは製薬会社へ6年勤めた後、青年海外協力隊としてアフリカのニジェール共和国へ2年間赴任した。任務は、感染症対策のための啓発活動だった。

「感染症の正しい知識を持ってもらうために、紙芝居やラジオを活用して啓発活動を続けました。例えば、マラリアは蚊から感染するので、寝る時は蚊帳を吊るしましょうといった内容です。」
2年間の啓発活動の成果は数字に表れた。
「任期の初めと終わりにアンケートを実施したら、正答率が20%から80%くらいまで上がっていました。」
ただ、その後に別の質問をしてみると、本当の問題解決にはつながっていないことに気づいた。
「『蚊帳の中で寝ましたか』『蚊帳を買いましたか』と聞いても、アクションしている人は少なかったんです。蚊帳を買うお金がなかったり、どこで買えるのかも知らないからです。」
「私は2年間、いったい何をやっていたんだろうと情けなくなりました。」
改めて振り返ると、医療の知識だけでなく、マネジメントの力も必要なのではないかと考えるようになった。

「現地に根付くような持続可能な活動でないと、問題解決につながらないと感じました。2年間という期間限定の活動では、足りなかったんです。」
「私ひとりの力では到底無理で、人の協力を得て、お金も循環させて、長い目線で問題に向き合う必要があります。そのためには、組織作りや運営の仕方を学ぶことが必要だと思いました。」
帰国後、製薬会社に勤める傍ら、ビジネススクールに通いMBA(経営学修士)を取得した。
ビジネススクールでは、起業を前提にビジネスモデルを考案する授業があった。そこで考えたビジネスモデルが、「置き薬」の手法だった。
「アクセスが悪いのが、アフリカの医療課題の1つなんです。私の活動していた村では、ロバが引くトロッコで1時間から2時間かけて病院まで行くんです。たどり着いたとしても、病院の待ち時間もあるし、薬の在庫がないなんてこともあります。」
「置き薬であれば、目の前にあるので待ち時間もないですし、薬の在庫がないということもありません。交通費も節約できますし、診察費もいらないので、お金の負担も少なくて済みます。」
ビジネスモデルを形にすることは、簡単なことではなかった。
「教授や経営者から、『本当に効果があるのか』とツッコまれて、モデルを1回潰してゼロから作り直してみたいこともあります。その時100個くらいビジネスモデルを考え、本当にアフリカの医療貢献につながるかどうか、ひとつひとつ検証し直したりしました。」
「その結果、置き薬方式が一番現地のニーズに合っているという結論に達し、授業の最後に発表しました。そして、アフリカでの医療支援事業に乗り出すために、NPO法人を立ち上げました。」
持続可能なモデルにこだわるのは、「蚊帳」の経験の他に、もう一つある出来事があったから。
「アフリカで活動していた時、子どもを抱えたお母さんが『子どもが高熱で死ぬかもしれない。病院に行くので200円ちょうだい』を言われました。私はあげませんでした。」
「次に村に行くと、その子どもは亡くなっていたんです。」
「お金をあげれば亡くならなかったのか、あげれば本当に解決するのか、そのことがずっと引っかかっていました。」
「ただ言えることは、私の経験は課題の一部が見えただけに過ぎないということです。一時的なサポートではなく、継続して回せる仕組みを作らないといけないと思うようになりました。」
法人立上げ後、ビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞したり、2016年12月にはクラウドファンディングで約250万円の資金調達に成功している。
既にタンザニアの2つの村に置き薬を設置しており、事業は着実に進んでいる。
理事の山口さんは、人事や資金調達、広報の担当をしている。2016年5月にジョインし、同年11月に理事に就任した。普段は、メーカーで海外事業の担当をしている。

「現職よりも、ダイレクトにアフリカに関わりたいと思っていて、NPO法人を探していました。」
「いろいろNPOを廻りましたが、ビジネスマインドを持ったところがいいなと思っていたんです。」
イベントでAfriMedicoを知り、チャリティーランや説明会にも参加し、ジョインを決めた。
「自分が何で貢献出来るか考えました。国際協力や医療の専門知識はなかったので。」
「社会人力で貢献出来ると思って、書類やパワポ作りから始めようと、最初は広報として加わりました。熱い思いさえあれば、出来る仕事が必ずあると思っています。」
今はホームページやFacebookを活用した広報の仕事や、マイルストーンを決めたり、タスクの采配などをしている。
運営に欠かせない、資金調達の仕事も行っている。
「どの助成金に申請するか決めたり、書類の作成も行っています。メンバーも資金のことを気にかけてくれていて、調達の手段があれば『こんな方法どうかな』と持ちかけてくれます。書類作成も特に専門知識はいりません、是非来てください(笑)」

「今後は、アフリカ現地の置き薬の流通が活発になるので、資産や在庫回転率の管理など経理財務のバックグラウンドを持つ人も加わってくれると心強いです。」
山口さんのアフリカへの関心は、学生時代のモロッコでの体験がきっかけ。
「子ども達にあめとかペンをちょうだいと言われて、ペンをあげると『ペンだー』と走り回るくらい喜んでいました。ペンひとつでこんなに喜ぶんだ、と日本との水準の差に衝撃を受けました。」
「同時にフレンドリーでもあって、こういう人々と一緒に発展できることをしていきたいと思ったんです。」
将来的に事業が軌道に乗ったら、より多くの時間と力をAfriMedicoに使っていきたいとも思っている。
大谷さんは、2016年12月にプロボノとしてAfriMedicoにジョインした。普段は、ハードウェアのスタートアップで海外市場開拓を行っている。
アフリカに関心を持ったのは、学生時代にブルンジ共和国に2ヶ月滞在したことがきっかけ。

「ブルンジが大好きになってしまって。無邪気に話しかけてくれるし、少し暑苦しいくらいでした(笑)。今でも、たまに『Hi』とだけ連絡が来たりします。」
「ただ、ホームステイ先は同じ敷地内に3世帯入っていたのですが、あんまりいい服も来ていないし、大人でも職がない人も多かったんです。」
「この子たちはどうなるんだろう。この子たちを将来的になんとかしたいと純粋に思いました。」
AfriMedicoにジョインしたのも、スタートアップに就職したのも、「ブルンジをなんとかしたい」という想いが動機だ。
「ブルンジのように政府やインフラが整っていないところでは、0から1を生み出す力が必要だと思ったからです。」
AfriMedicoでの仕事は、国内で置き薬のノウハウを学んだり、タンザニアの現地スタッフのマネジメントをしている。
「国内の置き薬の営業の方に同行して、置き薬事業の根本は何なのか、ノウハウを学んでいます。」
「感じたことは、人との関係性や信頼をすごく大事にしているということです。健康であることがベストなので、薬はなるべく使わない方がいいですよね。なので、『置き薬を使ってくださいね』というようなことは決して言わないんです。」
タンザニアの現地スタッフへは、そうして得た知識を伝えたり、仕事の進め方の提案をしている。
「薬の利用状況のレポートを『こうやっていこう』と提案などをしています。ただ、日本の方式を現地に合わせていかなければいけないですし、仕事のしやすさも大事なので、一緒に考えることを意識しています。」
「やりとりは手紙です。ラブレターです(笑)。」

AfriMedicoでは、各自の担当領域は決まりつつも、やりたい仕事に自ら手を挙げる形で決まることも多い。
「仕事内容はすごく配慮していただいています。AfriMedicoはベンチャーなので、やるべきことは多くて、やれることはなるべくやっていきたいと思っています。」
「AfriMedicoに入って感じたのは、メンバー同士すごくお互いを大事にしていていいな、ということです。」
「仮にミスをしたとしても、それを次に活かしていこうというやりとりがオンライン上でされたりします。こういうお互いを支える雰囲気がいいなと思って、ミッションだけでなく、この人たちと一緒に頑張りたいなと思ってます。」
ブルンジを良くしたい、という気持ちは変わらない。
「AfriMedicoでブルンジに進出出来るのであればそうしたいですし、将来的にブルンジに効果があることをしたいんです。ブルンジが好きなんですよ。」
みんなそれぞれ原体験は違うけれど、持続可能なモデルを創って、長期的に向き合いたいという想いは同じでした。
説明会と定例ミーティングへ3回参加してから、本格的に関わるかどうか決められるそうです。ご連絡お待ちしています。
NPO法人AfriMedico | |
募集職種 | 人事総務・広報、資金調達、タンザニア渉外、経理財務 |
仕事内容 | ■人事総務・広報 ホームページ、SNS、採用サイトを活用した広報や人材の募集 ■資金調達 各種助成金の申請、その他資金調達方法の提案・企画・事項 ■タンザニア渉外 現地の運営方法の提案、現地スタッフのマネジメント ■経理財務 現地の薬の資産や在庫回転率の管理など |
働く場所 | 定例ミーティングは、週末AT-Garage、または平日夜スカイプで行います。 |
働く時間 | ■定例ミーティング 週に1回。プロボノスタッフは毎回の参加は必須ではありません。スカイプで参加するスタッフもいます。 ■各自のタスク 各自時間を見つけて行っています。 |
求める人物像 | AfriMedicoのビジョンに共感いただける方専門性や経験を活かし、社会貢献されたい方 |
雇用形態 | プロボノスタッフ(ボランティア) |
給与 | ボランティア |
募集予定人数 | 若干名 |
選考プロセス | 定期的に開催される入会説明会参加後、3回の定例ミーティングに参加していただき、本格的に関わるかどうかご判断いただきます。 応募・問い合わせフォームより、お名前/メールアドレス/電話番号/ご年齢/希望職種をお送りください。担当者から追ってご連絡させていただきます。質問や、勤務のご希望・ご相談等も受け付けております。 |
その他 |